【取材記】1.長崎(前編) 良か人、良か酒を育む酒蔵 杵の川
日本酒学園!取材企画 第1弾がスタート!
酒蔵に伺った際の旅行記として各地の酒蔵をご紹介していきます。
4月下旬に伺った九州、その後は群馬と、酒旅を楽しんだ、生徒副会長Tの記事からスタート。
以後不定期ですが、シリーズ連載させていただきますので、よろしくお願いします。
九州旅1日目、取材を受けていただいたのは、(株)杵の川。
3つの海に囲まれた長崎県県央にある諫早市にある創業183年の酒蔵です。
長崎空港のゲートを出て抗原検査を済ませ、島原鉄道・バス停から諫早駅へ向かい、乗り継ぎ約15分後に緑深い土師野尾ダム入口で下車。
緩やかなカーブの道を少し戻る形で、東大川にかかる橋の向こうに見える白い外壁の事務所へ。到着後は事務所の応接室に通して頂き、話を伺ってきました。
杵の川・五代目蔵元 代表取締役社長 瀬頭 信介氏
取材のお相手は、“これで良かもんね“ と大抵の企画案は実行させてくれるという懐深い5代目蔵元 代表取締役社長 瀬頭 信介氏と、外部デザイナーとして請負の立場から、”蔵の中のデザイナー”に転身し社長室長も兼任されている入社10カ月目とは思えない江口 正和氏のお2人。(江口さんのご子息・正太郎さんは中学生の“ちびっ子イラストレーター“として杵の川のデザインに貢献中)
日本酒ってカッコイイ
前職で既に瀬頭社長と出会っていた江口さん。日本酒を好きになったきっかけが、瀬頭社長の講演会だそう。
自社にお招きして、意外なペアリングだったりと、様々なお酒の楽しみ方を教えて頂いたとのこと。その際に「日本って格好良いんだなって思ったんです」と。
「日本酒を飲まない人や無関係の人にも日本酒の良さをデザインのチカラで広めて行きたいです」と語る江口さん。
以後、昨年7月に入社して周囲を驚かせた後、蔵人の意見も参考にしつつラベルデザインなどPR全般のクリエイティブを行いつつ、社長室長も担っている。
樽職人の実演が見れる蔵開き
巧みな用具裁きで吉野杉を樽に変身させてしまう70代の職人、一ノ瀬安史職人。
特注の道具を手の中でクルクルと操る姿がかっこいいのだと語る江口さん「こうやってお腹側に刃をむけて削るんですよ。削りかすを浮かべて飲むお客さんも居ます」
蔵開きの際に樽造りを実演しており、その際に出る削りかすを杯に浮かべるという粋な演出。樽職人の次世代も育てているとのことだが、現役の一ノ瀬職人は蔵開きでのパフォーマンスも実施中。興味
(杵の川蔵開きは今年は4月末に開催された)
地元の料理に合う“良か酒”を作り続ける
酒の前に人の醸成をモットーにしているという「杵の川」の酒造りは、穀倉地帯である諫早産の米、多良山系の軟水で醸された酒。
事務所の目の前の田んぼにも山田錦を育てているとのこと。代表銘柄は「杵の川」と100%諫早産山田錦使用の「黎明」。後編でご紹介するが”沖縄黎明”の存在も見逃せない。「田中杜氏と晩酌で飲んでみて美味しくない酒は出荷しません」と語る瀬頭社長。「杵の川」は食中酒なのである。以下瀬頭社長と江口さんおすすめペアリングとともに、杵の川ブランドの一部をご紹介。
1.肉と合わせる「純米吟醸 はじまり はじまり」
瀬頭社長の妹さんと江口さんという社歴の浅いチームで造った酒。
まさに”新しい挑戦。新しい物語。はじまり、はじまり。”というキャッチコピーがぴったりだ。きょうかい77号酵母を使った、林檎を感じさせるピュアな酒。ハンバーグやフライどポテトと合うのだそう。地元諫早の米を食べて育ったブランド豚“諫美豚(かんびとん)”の料理もオススメ。爽やかで適度な酸味はスイーツにも合うとのこと。
2.牡蠣と合わせる「杵の川 純米酒 ★と・・・。~スタート~」
地元のブランド牡蠣・小長井牡蠣®︎。中でもとりわけ甘みが強くクリーミーな華漣®︎(かれん)と合わせる。今年2月開催の諫早の「かき頂きフェス」で振る舞われた酒。高級感のあるデザインに、更に奥行きを持たせているのがラベル素材へのこだわりだ。ライメックスという石灰石を主原料とした新素材。ラベルの素材からも牡蠣を連想させる仕掛けだ。杵の川 オンラインショップ でも購入可能。
3.うなぎと合わせる「うなぎ上り」
一ノ瀬職人が造る吉野杉の“樽酒“。樽香がまろやかでかつキレを楽しめるお酒とのこと。諫早観光の際にぜひ、うなぎ屋で堪能して欲しいお酒。諫早の「楽焼うなぎ」はその調理法が珍しい。焼いた後、信楽焼の蒸し器を使って蒸しあげるとのこと。ぜひ諫早で味わって欲しい。
杵の川の変遷史(後編へ続く)
杵の川の変遷は目まぐるしい。1839(天保10)年に長崎県東彼杵町で創業した当時は「丁子屋醸造」、諫早市へ移り「黎明」「太陽酒造」と社名が変わって行き2010(平成22)年「株式会社杵の川」となる。
大学時代は法学部だった瀬頭社長。もともと蔵を継ぐ気は無かったが、先代に帰って来ないなら後継を探すと言われた際、思うところがあり蔵人の道へ進むことに。杜氏・田中 浩隆との出会いについて伺ってみると瀬頭社長とは「繁桝(しげます)」を醸す八女市の酒蔵、高橋商店。同社とは親族としても繋がりがあるとのこと。そんな二人は同期入社で2年勤務した後「黎明」に戻る瀬頭社長が田中杜氏をスカウトし入社。のちに5代目蔵元となった瀬頭社長。「黎明(れいめい)」時代からのカウント数とのこと。”黎明時代”
次回後編は、目まぐるしい社史に続く。
Information
株式会社 杵の川
〒854-0056 諫早市土師野尾町17番地4
(バス停 土師野尾ダム入口下車 約徒歩3分)
杵の川オンラインショップ
[「純米吟醸はじまりはじまり」が購入できるお店]
鶴川酒店(諫早市)
富屋酒店(大村市)
酒のひらどごや(長崎市)
[東京で買える店]
日本橋 長崎館|JR東京駅 八重洲北口(取り扱い銘柄はお問い合わせください)
[諫早で飲める店]
福田屋|アエル商店街内
福田屋は文久3年(1863)創業のうなぎ専門店。ほか諫早市内のうなぎ屋さんがオススメ。
杵の川 蔵元直営きき酒処|諫早駅東口
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